初心者にもわかる新宿 リラクゼーション
そのための経団連としての〈規制緩和に関する要望事項〉は、運輸、通商、流通、金融・資本市場など一二分野にわたっている。
農政・食品工業については、コメの自由化にいたる〈食管制度に基づく流通規制の段階的廃止〉などが含まれている。
金融・資本市場については、郵便貯金は、〈あきらかに民間金融機関の業務を圧迫している〉とか、〈小口預金の金利自由化の大きな阻害要因となっている〉などと、その業務の見直しを要求。
また、簡易保険制度についても、〈これ以上の業務拡大を抑制〉し、政府系金融機関についても、統廃合と合理化の推進につきる。
だが、すでにみてきたとおり、彼らのいう自由化とは、金融大企業などのやりたい放題を、国家ぐるみで認めてバックアップすることにすぎない。
また、彼らのいう国際化とは、すでに多国籍化した大企業が、国境を無視してどこででも勝手放題がやりやすくすることにすぎない。
M委員長は〈「まず自由ありき」である〉と強調していたが、彼らの自由化、国際化のために規制を緩和せよという要求には、「まず大企業の勝手放題ありき」である。
しかも、財界と大企業のいう自由化の対極には、国民とその生活の「不自由化」ありきである。
金融大企業が駆使するマネー・マジックは、国家ぐるみのマネー・マジックと有機的に結び付き、国民の財布は「不自由化」してきた。
経団連の「要望」が求めている自由化が進行するたびに、われわれの「不自由化」が確実に進行してきた。
ところが、大企業と財界は、政府・自民党と密着して、自らが求めている自由化が国民が求めているものであるかのように変造する、政治のマジックをも駆使している。
政府、関係省庁には、数えきれないほどの審議会などの諮問機関があるが、それらの審議会は、財界と大企業の要望を、いかにも国民の要望らしく変造する、彼らの新「議会」になっている。
新行革審もその新「議会」の一つだが、経団連が〈積極的に支援、協力〉をおしまないというだけの構造になっている。
新行革審では、財界の労務対策本部である日経連会長を長年つとめて、いまはその名誉会長となっている大槻文平が、会長をつとめている。
委員の椅子も、財界関係者や彼らのブレーンたちが占めている。
その規制緩和小委員会も、財界を代表する政治参謀の瀬島が委員長である。
彼は中曽根前首相のブレーンとなり、竹下首相のもとでも同じ役割を引き継いでいる。
金融大企業のマネー・マジックを思うがままに自由化し、国家ぐるみのマネー・マジックを発揮させてける以外にない。
金融制度調査会は、このSのもとで、N銀副総裁や全国銀行協会連合会会長、日本証券協会会長など金融大企業の代表たちと、彼らのプレーンが顔をそろえている。
彼らが、金融大企業に好都合な金融制度への自由化を推進している。
保険審議会も、生命保険会社と損害保険会社の代表を中心にしたもので、金融大企業の代表がそろっている。
ここでも保険会社の要望を審議して、第三章でみたように、T海上のトップがいったとおり、業界を代表する大企業の自由な金儲けのための道を舗装する役目を果たした。
外国為替等審議会も、大銀行や証券会社、またその業界の代表たちがそろっている。
彼らは、外為取引や海外直接投資がより自由になるように、さまざまな手を打ってきた。
そのおかげで、投機筋の彼らが、外為取引で存分に投機に興じるチャンスをひろげてきた。
これらの大企業の自由化のために「不自由化」を強いられてきた国民は、彼らの勝手放題に待つたをかける以外にない。
そして、マネー大国のマネーや富が、国民生活を豊かにする方向に流れを変えなければ、流した汗が酬いられるだけの生活は保障されない。
だが、その流れは、黙っていても自然に変わるときた大蔵省関係の新「議会」も、新行革審に劣らない。
大蔵省の諮問機関である金融制度調査会は、S直が会長をつとめている。
SはN銀のはえぬきだが、現職のN銀職員のときから財界団体の経済同友会に籍をおいていた。
N銀総裁をつとめたのち、同友会の代表幹事となり、現在は最高顧問をつとめて新藤稔国際証券顧問は、七五年から七七年までN銀政策委員会室長(当時は庶務部長)をつとめた。
彼は、新宿N証券ビル二五階にある国際証券の役員室で、N銀での経験にもとづきながら話してくれた。
「アメリカでは、金融政策を決定する審議の内容は公開されるし、確かにその金融制度や政策決定は民主化されています。
こういう民主的な制度は制度として必要だけども、じゃあ、アメリカが、日本より財政や金融のパフォーマンスがいいかというと、そうはいえない。
レーガンが、あんなに赤字をつくっちゃった。
結局、そういう仕組みをつくる国の雰囲気がどうかということであり、基本は国民の経験と関心の問題ですよ。
やや大きなことをいわせてもらえば、国民の民主主義における成長の度合です」「日本では、狂乱物価で、国民は苦い、高い月謝を支払った。
その経験があって、N銀も金融引き締めができるようになったけれども、それまでは国民や世論は引き締めを受け入れてくれなかったんです。
「開かれたN銀」というようになったのも、背景には狂乱物価のさいの国民の経験があってのことです。
その後の引き締めも、国民が狂乱のときのインフレを経験しているから、それをバックにしてできたんですよ。
政府だって世論を一番、気にしている。
N銀行法にしても、政策委員会に関する一三条だけを差し込んだものになっているけれども、国民が変える気になったら、国会で改正できる。
だが、それも改正していないだけなんです」聞きようによっては、「痛い目にあわなければわからない」といわれているようだった。
だが、私自身の自己反省として、強く胸につきささるものがあった。
これまで日本の大企業を中心に追跡してきたが、自動車産業などの製造業が中心だった。
この書の「はじめに」でふれたが、日ごろマネーにはあまりにも縁がなかったがために、財テクにもマネーゲームにも無関心で、マネーには無知を決めてきた。
銀行や証券会社、保険会社などには、それぞれ特有の壁があって、素人はなかなか入り込めない世界だった。
取材するにも、まず特有の予備知識が必要で、ちょっとした思い付きでは入り込めない別の世界に見えた。
しかし、「カネは魔物」といわれるように、マネーは人を動かし、社会を動かしている。
それにもかかわらず、なぜ、長いあいだ、マネーに関しては無知ですましてきたのだろうか。
私のようにマネーは別の世界と決めこんできた無知が折り重なって、マネーを持つ人びとだけの世界を固め、高い塀をはりめぐらされてしまった。
そのために、「1プラス2は3」という単純計算のマネーの世界もベールにおおわれ、単純な構造のマネー・マジックも見えなくされたままになっている。
だが、マネーの世界とは無縁にされている貧しいわれわれこそが、人を動かし社会を動かしているマネーを単純明快な目で追跡しなければならない。
そのマネーの流れを変えなければ、貧しさからの解放もありえないだろう。
これがこの書の取材を終えての私の結論であり、自己反省だった。
この書の仕事を終え、すっかり疲れてしまった。
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